「木村鮎」御用達 その理由 其の三

インタビュー 藤尾康浩様
middle オーナーシェフ
京都市左京区下鴨上川原町5-3
サンペレグリノヤングシェフ2018 優勝


「木村鮎」はミシュラン星付きの料理人が認めた「あゆの店きむら」の最高峰ブランド鮎です。
「middle」は2021年10月にオープンしたフレンチレストランです。
 オーナーシェフ藤尾康浩様は、2016年、「RED U-35」ゴールドエッグ受賞、2018年には国際コンクール「サンペレグリノ ヤングシェフ」で日本人初の優勝を果たされました。季節の選りすぐりの食材を駆使した独創性あふれる料理で注目を集める「middle」様には「木村鮎」をご用命いただいております。今号は藤尾様にお話をうかがいました。

「木村鮎」で世界ナンバー1になりました

 国際コンクール「サンペレグリノ ヤングシェフ」は、30歳以下の若手シェフを対象とした国際料理コンクールです。2018年日本人として初めて優勝しました。このコンテストで、私が日本らしい食材として選んだのが鮎です。
 和歌山や滋賀県安曇川などの天然鮎もいくつか試しましたが、メニューに組み込むには同じ品質、大きさ、形の鮎を安定的に入手する必要があるため、養殖物を使うことにしました。試作するために数種類を取り寄せましたが、木村鮎は自分のイメージにとても近かったので、使ってみることにしました。 私は釣りが好きで、鮎の友釣りもしたことがあります。木村鮎からは、その時に感じた釣れたての天然鮎と同じような、スイカに似た素晴らしい香りがします。生の状態でも美味しそうな印象。もちろん焼いても魅力的な美味しさです。

木村鮎に、日本人のシェフとしての「想い」を込めました

 コンテストの最終決戦はミラノで行われました。審査員は世界的に有名なトップシェフが名を連ねていました。
 季節的かつ日本的である鮎を使った料理に、日本人としてどんな想いを込めるか……。この課題を徹底的に考えて料理を仕上げました。
 コンテストで使用したのは20センチ弱の木村鮎です。欧米では魚の頭は敬遠されるためカットし、カリカリに揚げたものを砕いて使用しました。ソースは内臓、うるか、黒ニンニク。ホイップクリームで甘みと軽さをプラスしました。
 私の店では、このコンテストに出品した料理に近いものを提供しています。活魚や活〆など、木村鮎をさまざまな調理法で試して、可能性をさらに拡げてみたいと思っています。

ミシュラン星付きの料理人が認めた
ブランド鮎の最高峰

味の豊かさと安定した品質が高く評価され、ミシュランガイドにも名を連ねるような数々の名店が、理想的な食材として木村鮎を使用しています。

木村鮎について詳しく

琵琶湖の蜃気楼

蛤(はまぐり)が生む蜃気楼

 蜃気楼と聞いて思い浮かべるのは砂漠。映画などであるはずのないオアシスがゆらゆらと揺れているシーンだろう。真夏のアスファルトの道路に現れる〝逃げ水〟も蜃気楼現象のひとつだ。蜃気楼が発生する科学的なメカニズムが解明されるまで、日本では、自然現象ではなく「大蛤(はまぐり)が気を吐いて蜃気楼が生じる」怪異だと考えられていた。
 江戸時代中期の浮世絵師「鳥山石燕」(とりやませきえん)は、多くの妖怪を描いた人物で、1780年に刊行された『今昔百鬼拾遺』に蜃気楼図が収められている。蛤が空気に楼閣都市を吐き出しているような絵に、「史記の天官書(てんぐはんしよ)にいはく、海旁蜃気(かいばうのしんき)は楼台に象(かたど)ると云々。蜃(しん)とは大蛤なり。海上に気をふきて、楼閣城市のかたちをなす。これを蜃気楼と名づく。又海市(かいし)とも云。」と書き添えている。庶民は幻想的な蜃気楼図をめでたい紋様と考えていたようで、工芸品にも描かれていたという。
 考えてみれば、蛤は古来より良縁や夫婦円満の象徴とされ、そもそも縁起物である。幻想的な蜃気楼のデザインがプラスされた図像は、さぞ人気があったのではないだろうか……。

龍が生む蜃気楼

 琵琶湖で蜃気楼が発生することを知る人は少ない。遠い異国の楼閣都市が現れるというものではないが、湖の蜃気楼は対岸の風景などが下方に伸びたり、逆さまになったり、ジグザグになったり複雑に分裂したりと変形する。
 蛤は海の生物である。琵琶湖は淡水湖で蛤は棲息しない。
『妖怪事典』(村上健司著)によると、蜃気楼は「『和漢三才図会』では蜃気楼の原因は二種類あるとし、龍類に属する蜃や大きな蛤が吐いた気が楼閣を現すのだとしている」。また『[図説]日本妖怪大全 』(水木しげる著)では、蛟(みずち)は「蜃」と書くとし、「燕子花(かきつばた)を食うと気を吐いて蜃気楼をつくる」と書いてある。近江は龍の伝承が多い地域である。湖の民は蜃気楼は龍(蛟)が生む怪異だと考えていたのではないだろうか。
 ところで、近江の名産シジミ。漢字は「蜆」である。虫偏に見ると書く。空にかかる「虹」という漢字も虫偏である。これは虹が龍の一種と考えられていたからだ。
 あくまでも妄想だが、大蛤ほど幻想的な蜃気楼は無理でも、「蜆」もごくわずかな蜃気楼を生むことができるのではないだろうか……。気象条件が整えば、冬の琵琶湖では蜃気楼(浮島現象)を観察することができる。あゆの店きむらの「しじみ味噌汁」と合わせれば楽しい縁起物である。



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